ひとりずつ

ひとりずつ、覚悟していく。
ひとりずつ、覚悟させていく。
ひとり、またひとり。
どこまでやれるか、
最後までに
誰まで覚悟させていくことができるか、
やれるところまでやる
命を削ってやる。
これが俺の仕事。

覚悟

難関の学校に合格するには、覚悟がいる。覚悟がない人は、難関の学校が持っている難しさに立ち向かうことができない。これは、いくら普段の成績がよかったとしても、覚悟がないと合格できないようになっている。塾でやったことを、素直にやるだけでは、足りないのだ。
だから、覚悟を持たせる。これが勝負どころなのだ。

眠れ

眠れ
眠れ
心を無にして
身体中の力を抜いて

眠れ
眠れ
頭は起きている
身体は安心してる

眠れ
眠れ
神はよく生きる者に
よき死をあたえる

眠りは
一日の終わりの死
よき眠りは
心のエネルギーを
復活させてくれる

眠れ
眠れ

明日のために、
眠れ

師匠

僕が、この仕事をやり続けることができるのは、若い頃師匠の下で働いたからだ。これは間違いない。誰もが心から納得して理解できる教え方を教わった。家庭のことを理解した上で、何も言わずに、その家庭にあった指導があることも、師匠から、教わった。ひとくせも、ふたくせもある先生を技術があり、人間としてバランスのとれた魅力を引き出していくのも、師匠から教わった。勝負どころに来たときは、命を賭けて本気にさせていく力も、師匠が背中で教えてくれた。
僕が、採った先生やアシスタントを丁寧に、丁寧に育てるのは、師匠にしてもらったことを、返さねばならないと思うからだ。人は自分がしてもらったことと、同じことをする。愛情をかけ、大切に育ててもらえば、次の人にも愛情をかけ、大切に育てて行こうと思うだろう。逆に罵倒されながら育てられると、次の人にも、罵倒しながら育てるだろう。だから、人を育てるときは、愛情をかけ、大切に育てることだ。

俺は、この仕事が好きなのだな

俺は、この仕事が好きなのだな。特に、一人の人間を、待って、待って、ただただ待ち続けて、このタイミングだなというときに、本気にさせていく、そして、一気に伸ばしていく。これが、この一瞬が好きなのだ。僕が、こうやって人を本気にさせることができるようになったのは、師匠のお陰だ。若い頃は、師匠に憧れつつも自分には絶対無理!と思っていた。で、実際できなかった。だが、自分が看板をしょって、体を張り、命を削りながら、この仕事をしていくうちに、ごく自然にわかるように、できるようになった。今だな、というのがピンとわかるようになった。誠実に、命を賭けて、ひとつのことをやり続けていくと、その積み重ねが相当に大きくなることもあるのだ。そして、一度身に付けたものは、そうそう簡単には崩れない。
    これも、体をはって、顧客と向き合う姿をいつもいつも見せてくれた師匠のお陰なのだ。

コーヒーショップ

時間があるときに行くコーヒーショップがある。久しぶりにそのコーヒーショップに来た。まわりは下町のお年寄りばかりだ。その中にぽつんと自分がいる。時間の進み方がここは違う。ゆったり、してるのだ。テーブルとテーブルの間隔も広い。四人がけのテーブルに一人で座ってもやらしくない。ゆったりしたいな、と思うとこのコーヒーショップにくる。
コーヒーが体に沁みる。カフェインが効いてくる。ここに来ると、やっと来れたなっていう気持ちになる。僕もあと二三十年したら、毎日ここに来るのかな。そんなことを考えるうちに、そろそろ時間になった。

温泉

ひたすら温泉にはいる。
頭を洗っては、温泉にはいる。
歯をゆっくり磨いては、温泉にはいる。
髭を剃っては、温泉にはいる。
体を清めては、温泉にはいる。
ご飯を食べては、また、温泉にはいる。
そして、眠る。
体が弛緩して、眠るだけ眠れる。
安心して、眠れる。
朝、体が休んだのだな、とわかる。
で、もう一回、温泉にはいる。
髪を整えて、
シャツを着て、
ネクタイをする、
スーツを着る、
腕時計を着ける
これで、
頑張れる。

神様、
ありがとう。

生きる

僕には孤独癖がある。いつもいつもひとりぼっちだという感覚だ。もともと、この強い孤独癖のお陰で、独立してやっていくことができている。学生の時は、苦しかった。みんなと群れたり、つるんだりすることができないからだ。今でもやはり、人の輪の中に入るのは苦手だ。というより、できない。まあ、これでいいと思っているのたが。
    だが、最近、自分は孤独ではないな、と思えるようになった。たしかに、孤独は孤独なのだが、つながっているな、何か自分が愛情なり、思いやりなりを、なにくわずにかけていると、繋がるものなんだな、と思うのだ。人と人との関係は目に見えるものではもちろんない。見えないのだけれど、自分がかけたものの、ほんの一パーセントくらいの糸でつながっている気がするのだ。
   僕には孤独癖がある。今まで、ずっとこの強い孤独癖のお陰でやれてきた。この気質は変わらない。きっと。でも、誰かのために、精一杯やっていると、ほんのわずかでも、人と繋がれるのだなと、やっと思うようになったのだ。